AI、ファイアウォール、ダイアグノーシスによる鉄道安全ソリューション
鉄道技術が進歩した現在も、相当数の鉄道事故が発生しています。2017年から2021年の間に、米国では合計681件の列車事故が発生し、多数の死傷者と多額の経済損失が発生しています。人工知能 (AI)、モノのインターネット (IoT)、ビッグデータの出現と発展により、AIによる行動分析、列車診断、およびサイバーセキュリティなどの側面で、鉄道分野が未来の列車と鉄道に進化する機会を提供してきました。鉄道業界をリードするサプライヤーとして、Axiomtekは数十年にわたって鉄道用に完全な組み込みソリューションを提供し、鉄道運行および保守を向上させる目的で、AI、IoT、エッジコンピューティングの分野で実証済みの技術を活用します。
AIによる運転士と乗客の行動分析
現在、列車運行のほとんどはワンマン運転ですが、運転士の重要性は低下していません。運転士は、乗客や運行の安全を確保するため、すべてに目を配る必要があります。運転士は一人で業務をしているため、集中力が低下したり、急病になったりする可能性があります。そのような場合に備えて、車載監視アプリケーションのエッジAIシステムにより、運転士の行動を監視・分析することができます。例えば、運転士が倒れたり、5秒以上にわたって視点が一方向に固定された場合にアラームが発動し、運転士とコントロールセンターに警告が送られて、緊急処置が必要かどうか判断するよう促します。同様に、乗客の異常行動や攻撃的な行動もAIビジョンによって検知され、乗客の安全を確保します。
最近では、独自のアプリケーションである座席利用率検出にも、当社のシステムが展開されています。高度なソフトウェアとカメラを統合したエッジAIシステムにより、乗客の着席・離席を検出し、空席状況についてリアルタイムのデータが得られます。乗客が利用しやすいよう、各車両の利用率が、プラットフォームの電光掲示板にグラフィック表示されます。加えて、モバイル端末でも利用率を確認することができるため、交通手段により多くの選択肢や変化をもたらします。
AIを活用したシステムとアプリケーションのインテリジェンスに支えられ、鉄道運行がより安全かつスマートになると同時に、乗客の快適性が向上しています。Axiomtekの新しいUST510-52B-FLは、最大65W TDPのIntel® Xeon® プロセッサ (Coffee Lake) を搭載しており、ライトエッジAIのアプリケーションに適しています。また、コンパクトなサイズながらも、最大64GのDDR4システムメモリを2基搭載した高性能な画像処理能力を有しています。M.2またはmini PCIeスロットを介してアクセラレータモジュールを使用することで、さらに性能を高めることができます。
行動分析システムに最適であるのは、システムにIPカメラに対応できるようPoEポートが8つ備わっているということです。これにより、複数車両にカメラを設置し、リアルタイムな監視が可能となります。また、5Gモジュールに対応できるよう、M.2 Key B 3050スロットが装備されています。ストレージには、Intel® RAID 0/1機能搭載のホットスワップ対応2.5インチSATAドライブとmSATAが、それぞれ2基搭載されています。システムは堅牢な設計で、SSDが搭載されているため、3 Grmsまでの振動に耐えることができます。また、動作温度範囲が-40度 ~ +70度と広いため、厳しい状況下でも動作可能です。不測の事態が発生した際に証拠を保全できるよう、Axiomtekは、ネットワークビデオレコーダー (NVR) の搭載を提案しており、そのためにtBOX300-510-FLの追加を推奨しています。EN 50155認証システムには、ホットスワップ対応の2.5インチSATA対応ドライブが4基搭載されており、RAID 0/1/10をサポートしているため、大容量の記憶領域とデータのバックアップを確保できます。
オンボードダイアグノーシスと予知保全
乗車時の安全を確保する上で、当社はメカニックや技術者による定期点検のみに依存しません。音センサーなどのさまざまなセンサーやIoTの開発を行うことで、今後起こりうる故障や必要なメンテナンスを検知できる、予知保全への移行を進めています。信号やデータ分析により、列車の運転士は台車や車軸の状態をソフトウェア経由で把握でき、最短時間で問題に対処できます。さまざまなプロトコルを介して異なるセンサーからデータを取得するには、豊富なI/Oのゲートウェイが必要です。ゲートウェイがデータを統合して中央管理システムに伝送するため、問題の発生場所と種類を即座に特定することが可能となります。
AxiomtekのコンパクトなtBOX110-APL-VTには、Intel Atom® x5-E3940プロセッサ (Apollo Lake) が搭載されており、豊富なI/Oインターフェイスが備わっています。小型ながらも、CANBusが2基、RS-232/422/485対応のCOMポートが2基備わっているため、高速モードでレイテンシなしにパラメータ伝送を行うことができます。2基のLANポートに加え、ワイヤレス接続を可能にするMini PCIeスロットと外部SIMが備わっています。USB 3.0ポート2基とデータ入力/出力 (6-イン/2-アウト) により、より多くの周辺機器に対応し、複数のデジタル信号を収集できるコスト効率の良いゲートウェイとなります。
システムは、DINレールや壁掛けに対応しているため、スペースが限られた電車の客室内でも柔軟に設置できます。データ収集に加え、緊急事態発生時には、運転士から警告や避難誘導アナウンスを車内案内表示装置 (PIS) に送ることができます。世界中で鉄道が到達する最も遠い場所での厳しい環境に耐えるため、tBOX110-APL-VTの動作温度は、-40度から+70度と広範囲に設定されています。
鉄道サイバーセキュリティ
鉄道車両のセンサー、装置、システムも、オペレーションテクノロジー (OT) の一部です。OTと情報技術 (IT) が統合され、エッジから詳細なインサイトデータが提供されると、OTはインターネット環境に接続され、サイバー攻撃の脅威に晒されます。事実、鉄道システムや関連システムが世界中で攻撃され、混乱と虚偽情報をもたらしています。列車の誤作動を防ぐため、列車内にファイアウォールを設置するシステムにより、中央制御装置などのシステムを保護することは、有効なソリューションとなります。ファイアウォールにより、OTネットワークをITネットワークから切り離し、未知のパケットをフィルタリングすることが可能となります。